第59代 代表幹事
村田眞一郎

まずは、議論から始めよう そして、想定外の未来を創造しよう

 2020年から始まるコロナ禍による変化は様々なものを浮き彫りにしました。これまで、個人と公共、資本主義と民主主義、グローバル化とナショナリズム、現実味をおびだしたメタバースでの活動と現実世界での生活、それら矛盾したもの同士のバランスが、日本においては、一見取れているかに見えていました。しかし、実態経済が止まる中それとは無関係な株価の変動や、世界における日本のGDPや平均賃金などの相対的な順位などが示すような、それまで見てみぬふりをして、理解できていたかにおもっていた事柄やバランスが、実は得体がしれないものであり、コロナ禍という極限の状態で、現実の差し迫った問題として現れたように思います。感染症による死亡率やワクチン接種率は、個人の自由を尊重する民主的な国ほどコントロール出来ず、独裁的な体制で強権的に対策する必要性まで議論されました。人口動態統計等によると、感染症とは別の死因が明らかに増えているというデータがありながら、コロナ禍による経済的な被害者は感染症による被害に隠れてしまっていました。また、ロックダウンによって機能停止したグローバル化したサプライチェーンの見直しも今後議論されることになるでしょう。
 こういった、我々の判断の根源ともいうべきもの、グローバル化や多様性の尊重が抱えている問題が露呈する中で、当たり前だと思っている価値観が根底から覆されようとしています。激動する環境の中にいて迷いそうになる時に、自分を見つめ直すための指針となり得るものが理念です。八代経済開発同友会には、受け継いだ理念があります。その理念をもとに、奉仕の志をもって、幸福感とは何か、地域の活力とは何かをあらためて、共に集い、学びあうことで世界を俯瞰しなおしつつ、再度我々の立脚点を確認し、その上でこれからの未来に思いを馳せたいと考えます。
 とは言っても、我々は経済人であり、普段の仕事や経営においては、今後の世界や人類の未来ではなく、まずは今の環境へ適応し、小さなコミュニティの実体経済の中で利益を上げていく事が最優先です。そこでは、昼間は汗を流して今の仕事にいそしみ、これまでの経験やデータに基づくある程度想定内の予測をする事が精一杯です。視野は狭く、近視眼的にもなります。しかも、その方が上手くいくこともあり、コロナ禍ではその傾向がさらに大きくなっています。長期的な目線で見ると、その延長線上に明るい未来を描けない経営者もいると思います。
 コロナ禍において我々のこれまでの基盤自体が揺らぐ中では、現在の延長線上に未来への希望を描きづらい状況です。しかし逆に考えると、コロナ禍だからこそ見えた価値観が覆されるような変化は、その延長線上ではない、全く新しい世界が広がりつつあるその変化でもあります。その新しい世界を新しい視点で俯瞰して、想定外の未来を実現するために集い学び合うのが八代経済開発同友会の存在意義だと考えます。仕事を終え作業着を脱いだら、スイッチを切り替えて、過去のデータにとらわれるだけの想定された未来ではなく、全く違う視点や考え方を得て、今の時点では想像もつかない未来を仲間と語り合うために集いましょう 。
 本年度は、6つのテーマで委員会を設けて、各テーマに対しての各会員のスタンス考え方を確認することからスタートします。会員間の考え方や情報等の交換をし、合意形成を目的とした議論の場にしたいと考えます。
 新しいビジネスモデルの可能性を検討する委員会として、「協働組織活性化委員会」「テクノロジートレンド研究委員会」を設置し、新しいテクノロジーとそのトレンドを研究し、未来の新しいビジネスモデルの可能性を検討します。
 地域活性化については、「八代・天草シーライン建設促進委員会」「八代魅力発信委員会」を設置し、地方のあり方、生き残り方の根本から議論します。また、コンテンツありきではなく、すでにあるものを新しいテクノロジーを使って有機的に組み合わせて有効に発信できないかなど、地域活性化事業としても考え直します。
 コミュニケーションのあり方を考える委員会として、「次世代の未来をつくる委員会」「情報システム委員会」を設置し、会内外のコミュニケーションだけでなく世代間など、コミュニケーションのあり方を研究し、手法を検討します。会内においては、各委員会の内容やテーマについても、横断的に全会で共有することを目指します。
 まずは、各テーマについて、タブーなしで喧々諤々の議論をしていただき、これまでにない新しい価値観を産む土壌にしたいと考えます。

 八代経済開発同友会は、来年で60周年を迎えます。間違いなく起こる大変動を八代経済開発同友会はチャンスに変えるべく進んで参ります。八代地域でも、コ ロナ禍で経済的なもののみならず、文化的・教育的な既存のさまざまなコミュニティが疲弊しています。行政の皆様、各関係諸団体の皆様とは、今後地域の未来のために立て直すべきものは立て直し、新たに築くべきものは共に築いていかなくてはなりません。これまで同様にご指導、ご支援を賜りたく存じ上げます。